前を見ず、思い出を話す時間も大切
前を見ず、思い出を話す時間も大切。
グリーフケアカウンセリングをしていると時々思うことがあります。
それは、前を向かずに安心して故人の思い出を話したり、
後悔を言葉にしたり、悲しみを言葉にする場所は、
とても大切だということです。
私はカウンセラーをしていますから、
相手が抱えている苦しみや後悔や悲しみを
ついついどうにかしてあげたくなってしまう時があります。
でも、グリーフケアをさせて頂いていて、
それが自分のエゴであると気づきました。
必ずしもそれを望んでいないのだと、
そう、ご相談者を通して教わりました。
というのも、「死」というのは人生において大きなテーマであり、
敬遠されがちなテーマです。
その為、気軽に家族や友だちに話す事が出来ないのです。
話し手としたら、聞いて欲しい気持ちはありますが、
受け止めてもらえなかったり、相手に負担をかける事を避けるために、
話せなかったりすることがあるのです。
だからこそ、ただ聞いてもらうこと。
前を向こうとせずに、故人との思い出を懐かしみ話せること。
きちんと悲しいと言える場所。
きちんと辛いと言える場所。
そんな安心して自分とむき合える場所は大切なのです。
思い出に浸れる場所は大切です。
私は、こんなことをご相談者さんに聞いたことがあります。
「今は話を聞いているだけで、○○さんのお役に立っていますか?」と。
するとその方は、こう答えてくれました。
「そうですね、今は話を聞いてくれるだけで十分です。」と。
その方は、とても大切そうに思い出を一つ一つ丁寧に教えてくれました。
その姿を見て私は、悲しみや、寂しさと共に、温かさや故人を悼む
大切な気持ちを感じました。
「いつまでも思い出に浸ってないで。」
と、そのように声を掛けるのは簡単です。
ただ、もっと大切に感じるのは、
そういった思い出一つ一つを丁寧に大切にしていくこと。
思う存分、その時の気持ちを味わうこともまた、
必要なんじゃないかと思うのです。
それはきっと、あなたが二度とその思い出を忘れないように、
慈しむことだと思うからです。
だから、ただ話ができる場所。
前を向く必要がない場所。
「私自身」と共にいれる場所。
「故人」と共にいれる場所。
そんな前を今は向かないことも選べる場所が、
そんな前を向かないで、思い出に浸る時間が、
きっと人には必要なんじゃないかなってそう思います。
あなたにもそんな場所や時間が訪れますように。